そうか漢字か

耳そぎ饅頭町田康の「耳そぎ饅頭」は、昨日の日記にも書いたのだけれども、芥川賞作家センセイになっちゃってる人が自身をあほんだらの偏屈パンク歌手として日々の生活エッセイを同じような展開で繰り返し書き並べていて居心地悪い。
それでも読まずにいられない面白さのポイントのひとつは「漢字」ではないかと気づいた。
講談社文庫のこれは、やけに漢字が多くて、フリガナが非常に少ない。


先日読んだ斉藤美奈子女史の説では
「声に出して読みたい日本語」は、特に声を出して読むつもりもない人々にも売れた。
収録された古典の名文を見て、
「ああ知ってる、これこれ。私、覚えている。良いよね昔の懐かしい綺麗な文は。若い人は知らないんじゃないかしら、でも私はフフフ。」
老人達のそんな心を暖め、この本は大売れ。
その観点で買った人は、実際の年齢は若くても「年寄り入っている」ということ。


町田康さんのこの本の難読漢字の多さが少し嬉しい私は、
「あ、この字。知ってるわ。何だっけ。昔若い頃に覚えたんだ。
待ってな今思い出すからさ。ええっと。」
まさに、年寄り成分の上昇。「声に出して」を買う老人とおそろいね。

怏怏。炬燵。誰何。恰好。拵える。誂える。蠢く。嘯く。喩え。