ヨロヨロン

仕事の後に原美術館に行った。束芋さんの「ヨロヨロン」展。
束芋さんの作品を見に行ったのは初めて。これは一度見たら忘れない。
もう、忘れ様がない。だってさあ、映像作品の「公衆便女」とかさあ、
他のいくつかの映像作品も、ドローイングも、かなり猛毒。
捻じくれていて、鋭く尖っていて、強い。強烈。
でもフッっと、不思議にまったりとしている部分もあったり。
そして、私がそれを好きなのかどうか。良いと思ったのかどうか。
・・・正直、分からん。
「真夜中の海」は、やはり私も受け入れやすい。暗い中の波と不思議な映像。
しかし問題は、強烈すぎるその後の作品群。
今までにない作品とは思うがしかし、既視感がある。それは私自身が見た夢だ。
絶対に見たことがあるはずなのに、見たことを忘れてしまった、
見たことを忘れていることすら忘れている不吉な夢。
国旗掲揚代の首吊り死体も、トイレのべダルを踏んでもなかなか流れ去らない亀も、
喧しく喋る声に「これは日本語か?」と戸惑ったことも、不気味な手も、
大切な人の肉を調理したことも、すべて、自分が見たことを忘れていた夢だと思った。
束芋さんの作品は、好きとかグロすぎて嫌い、とかじゃなくて、
もうそこにはっきりと存在していて、
それはどうしようもなく忘れてきた自分とつながっている。


原美術館は、家から品川までが遠くて、駅からもちょっと遠いんだけれども、
またゆっくり来てみたい良い場所だった。