柿の漬物

仕事で行った独り暮らしのおばあさん。
私とは初対面だったのに、にこにことお茶をいれてくれて、
別に不要ですという私の声はあまり気にせずに
何かお茶請けになるのもをと一所懸命にあちこち探して
庭でとれた柿の皮をむいたのを自分で酢と塩に漬けた
変わった漬物を私にすすめてくれる。楊枝がないわとあせって
何度も使って少し黒くなっている割り箸を刺して、どうぞどうぞどうぞと言う。
そうか、日本の田舎のおばあさんの文化ってこういうものだったのか、
人からこういう歓迎の仕方をしてもらったのは、私は初めてかもしれない。
その柿の漬物は、塩味が強くて渋くて、軽い罰ゲームみたいな味だった。
それでもなんかとてもほのぼのした気持ちでうれしくいただいた。
おばあさんは元気に何度も昔の話を繰り返す。あばあさんはご近所の知人達が
皆で自分を見守って、いつも挨拶に来てくれたり毎日充実していると話す。
でもおばあさんの指すそのご近所の家の場所には、新しく道幅拡張した道路や
ガソリンスタンド。町の様子が変わってしまってどこかへ移転してしまったあとも、
おばあさんの心の中にいつも来て見守って励ましてくれる、
良いご近所さんだったんだろうな。