アデルの恋の物語

その日は私は疲れていた。
残業して帰宅してから、台所に放置だった食器を洗ってから
やっと遅い夕食に、うどんを作り
しかし息子は「先にカップめんを食べたからいらない」と言い
夫は私以上の長時間残業でまだ帰らず
娘はあいかわらず家中を散らかしたままバイトからまだ戻らず。
タツで1人でうどんをすすりながら途中で座椅子で寝落ち。
そこへ娘が「フランソワーズ・トリュフォー借りたよ」と帰宅。
ああ、娘は少し前に村上春樹の「海辺のカフカ」を熱心に読んでいて
あれの中で、アロハシャツを着て中日ドラゴンズの帽子をかぶった
気のいい青年「星野さん」が映画館で
フランソワーズ・トリュフォー監督特集を観てとても気に入るんだったね。
私はね、まだ見てないけど。
世の中の映画の9割以上は観てないし。それに今夜は見てもすぐ寝落ちする。


しかし、娘がDVDを再生し、ちょっとのつもりで見始めたら
思わず集中して最後までしっかり見てしまった。
話は、有名人の娘のさんアデルは、若くて清楚な知的美人で
上品で、親は金持ちで。しかし自分を捨てた恋人をあきらめきれず
外国にまで元恋人を追ってくる。しかし完全な片思い。
必死に頑張るうちに美しかったアデルは精神を酷く病んでしまう。
そんなシンプルなストーリー。
そして「映画ってこんなに美しくできるのか」と本当に驚くくらい
画面にあるすべてが端から端まですべて美しい。
女優の肌の白さ、スカートの布の重み、家具の木材の色、窓の光
俳優たちの立ち振る舞い、髪型、本の背表紙並び方、静かさ。
すべてが徹頭徹尾どうしてここまで美しく作れるのかと。
フェルメールの絵が動いているみたいだ。