「ヒミズ」はとても良い映画だ

水曜日レディースデー開催中とは思えないくらいに
客の入が慎ましやかなスクリーンで「ヒミズ」を見た。

ヒミズ」は園子温監督の新作映画。
私はね、「愛のむき出し」以後の園子温作品の中で
今回の映画「ヒミズ」が断然一番好き。
今までの映画って、「ヒミズ」を作るための準備だったんじゃないかとか
そんなことを思ってしまうくらい「ヒミズ」が良いと思う。
震災の後の日本で私が見るべき映画は、これだったんだと思った。


原作の漫画は全然読んでいない。映画は原作と違って、
震災後の情景になっている。


津波に全てをさらわれた瓦礫野があり、
被災コミュニティーみたいなものがあり
中学校の先生は、ちょっとピントがずれた励ましを語り
しかし、震災のずっと前からのどうしようもないクズの大人は
相変わらず酷いクズで、普通に生きることをじゃましてくる。
テレビでは放射能のことを言っているけれど
それどころではないくらいのハードな日常。


映画の最初から最期まで、緊張感が途切れることがない。
震災以外の事情による過酷な生活で
主役の若い2人、染谷くんと二階堂ふみちゃんが
水浸し泥まみれ叫び笑い叩き殴られ倒れ黙り歩き走る。
素晴らしく魅力的。


ドストエフスキーの「罪と罰」では、貧乏大学性ラスコーリニコフ
自分で借金をして、貸主を「シラミ」呼ばわりで
何故殺してはいけないかうんぬんなんだけれども。
ヒミズ」の主人公の住田くんは、もぐら=ヒミズのように、
じっと誰にもじゃまされない普通の暮らしをしたい中学生なのに
酷いクズ大人がガンガン絡んでくる。
 ロシアの民と違って、信仰とか神様とかは
住田くんや茶沢さんのところにいない。
でもこの2人の中学生は、神様はいないけど未来がある。
いややっぱり未来なんてそんなものはこの状況で有り得ないっしょ。
ところがあるんだよ。だから、「ガンバレ」とか無茶なことを
それでも大声で叫びながら、失われた町を走る。
ロシアの民がする「大地に接吻」なんて、この世界にはないけれど
ズブズブの水と泥は体を包む。


これはとても良い映画だから、みんな見ればいいのに。
でもかなりハードだから、メンタルがあまり悪くなくて
体調も落ち着いているときのほうが良いか。
でもずっとメンタルが好調な人だったら特に見る必要もないか。
公開中にもう一度見たい。