もっと困ったこと

昨日の職場行事の観劇は確かにしんどかった、が、
それよりも何倍もの労苦というか苦行の観劇は数年前にあった。
それは、「うたい」。
まず能楽堂学芸員さんに、能についてのビギナーにも丁寧で親切で
好感度の高い解説をしていただき、能に関する立派な展示物を見た。
そして、その解説を思い起こしたりしつつ
能の短い演目を鑑賞。狂言も鑑賞し、ちょっと笑った。
そこまでは全く平和だった。
しかし、事態は暗転。
私が未体験の「謡い」が始まった。
通常5分ほどで終わるというその「謡い」。
しかし、その日に限って特別なサプライズとして
スペシャルバージョンで1時間程に延長するという。
1人の老人が舞台に蹲踞し
その姿勢を保ったまま「しーぃーなぁーがーぁーわーーあー」
という感じで、地名をものすごく引き伸ばした声で
延々と続けていく。1時間ほどそれだけが続く。
そのとき半袖の軽装の私を、冷房が襲ってくる。
私の席は冷房が特に強く当たっていたようだ。
すぐそばの和服をきっちり着た女性は凛として、むしろ適温のよう。
大勢の客は身動きひとつせず、咳ひとつ聞こえず。
自分の上着を取り出すためには、足元のリュックのファスナーを開けなくてはならない。
しかし、この緊張感みなぎる静謐を、ファスナーを開ける音が壊すのは必至。
我慢するしかない。しかし眠くなってきた。
こんな寒いところで眠ると凍死まではしなくても、風邪はひくと思う。
寒い、眠い、寝ると死ぬかも、頑張るんだ、ファスナーが、いや無理、と
それが大変でした。