フルへについての続き

で、昨夜に続いて「フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ」の件。
これが入っているP-MODELの5枚目のアルバム「アナザーゲーム」は
私が力を込めて待っていたその発売が、延期がまた延期になって、
食らいつく気持ちで買って帰ったLPの付録に、紙に印刷された渦巻き。
で、その渦巻きに「これを丸く切り取ってLP盤の中心に置いて、
吸い込まれていく、と念じながらその回転を見つつ聴く」みたいな説明。
(このへんの記憶は遠くかすんでいるので、実際とは違うかもしれないが
私の今残っている記憶としては、こうなのよ。)
それで、まず「楽な姿勢で目を閉じてください」という平沢進師匠のアナウンス
から始まる。脳活動とかアルファー波とか。ボボボボボボって音とか。


LPはすでに所在不明になってしまったし、その後にCDになったのを買ったが、
実はこのCDは、今も私の見える位置に置いてあるのに再生したことがないまま
早10年。怖くて聴けないのよお。
好きと言っておきながら、激しく矛盾するこの私の態度。
なんかねえ、尋常でなくしんどかったのよ、このアルバム。
だってさあ、渦巻きだよ。あのアナウンスだよ。そういう塊なの。
で、それが当時の自分の気分と融和して。
もう温度はシベリアっていうくらい、凍りつくようなそれを、
当時は毎日聴いていたのって、今考えると結構丈夫な神経だったよ。
極寒の地の果てで、汗だくになって叫んでいるイメージ。


それで、「オランダ渡来のエレメント。鼻は確かにフルヘッヘンド。」
っていう歌詞の曲のあとに「フルヘ」。
杉田玄白たちが解体新書を書くのに、オランダ語の「鼻が盛り上がっている」と
いう部分だけを理解するのにも苦労したって話は子どもの頃に印象に残っていたが、
当時、キミの言っていることが私には本当に分からないよ
こんなに頑張って聞いていても分からない、私が言葉に出していることも
キミにはあまり分からない。っていう、まあ若いときにありがちな自分の気分。
伝わらなさのいらだちと、
でもそこで、そんなことは百も承知で、力一杯叫ぶぞ「フルヘッヘッヘ!」
よしっ!。何が言いたいんだか分かりゃしないが、
その声は、しっかりと聞こえているぞ!手拍子!踊れ!
っていう勢い。この潔さが好き。
ひきこもりの人々が集結して踊っているとも言えるかもしれんが。


この瀕死のテンションから、次にカセットブックの「スキューバ」が出て、
人とつながろうとして頑張ってボートを漕いで、裏目に出てキジルシ認定されても、
海の底から、って。ああこれで、もう大丈夫だってすごく安心した。