昭和時代の電話の思い出

電話機は一家に1台以上は無かった時代には
当然、兄弟あてにかかってくる電話を自分がとってしまう確率は高かった。
私の2歳年下の弟が、大学(夜間)に入学した時期に
私はちょうど骨折をして自宅で安静にしていなくてはならない状況で
家人達が仕事や通学のため日々留守にしている日中は
家にかかってくる電話はすべて私が対応せざるを得ない。
ややこしいことにこの時期、弟は我が家の住居面積のあまりの狭さのため
近隣に一部屋を借りてそちらに移住を図っていた。
しかし弟の大学のサークルの先輩という人々は、そのへんの詳細な事情までは
わからずに、日中に自宅に電話をかけてくるわけだ。
昼間は仕事に行ったり行かなかったりで、夜に大学で会う以外の連絡方法って
まあそのくらいしか思いつかないし。
しかし問題は、私は骨折療養中で、そして若かった。
人間は若いときには概して眠いものである。しかも要安静のお墨付き。
当然毎日の睡眠時間は常識を超える長さで、夜寝も朝寝も昼寝もする。
だから弟の関係者から電話がかかってくるときは
私は睡眠中だというのに電話に対応するという無理な状態であることが多い。
  他人 「K君をお願いできますか?」
  私  「Kは最近アパートを借りていて、今はそっちにいると思います」
  他人 「ええッ、ではK君のアパートの電話番号を教えてください」
  私  「うーん、えーと、えーと、今、眠くて思い出せない」
  他人 「お願いします」
  私  「あ、だんだん目が覚めてきた。ちょっと思い出せそうだ」
  他人 「頑張ってください」

そんな会話などをしていたら
ある日、弟は「K君のお姉ちゃんは本物のバカだから、電話に出たらがっかりする」とか
大学の先輩達の噂になっていると私に教えてくれた。
せっかく寝てるところ親切に対応してあげたのになんだよう、と思った。
携帯電話じゃ、相手の家族としゃべることなんかないよね。