葬儀の写真

お姑様が入会していた男性演歌歌手のファンクラブでは
会員の葬儀にその歌手の名前で供花を贈ってくれるという特典があったのだが
なんとお姑様は「恥ずかしいからそれだけは止めて。彼の名の花は求めないで」
という強い希望を義兄夫婦に何度も伝えていた。
せっかくなのにそんな残念な、とは思うものの故人がそこまで言っていたなら仕方ない。
葬儀の参列客皆に自分が男性歌手のファンクラブ会員になっていたことが知られるなんて
馬鹿にされるから絶対嫌なんだそうだ。
遺影に使う写真はしかし、皆で検討したところ
おしゃれして一番よい顔で微笑んでいた写真は、ファンクラブ企画での
その歌手とのツーショット写真。お姑様のところを引き伸ばして遺影に使って、
オリジナルはお棺にいれてあげた。
先に亡くなったお舅様との写真でなくてこれかい、との声も一部にあったが
こっちのほうが良い顔してるんだもの。