平気で美容院に行ける

ここ数年は私も美容院に行くのが怖くないよ。
おばちゃんになったせいで、よく知らない人に話しかけられても
かなり平気になったせいだと思う。
昔の美容院に比べて、今は客にそれほど話しかけないのが普通に
なったような気もする。
それとも若いお客には今ももっと話しかけているのかな美容師の方々は。


10代の頃とか、あの逃げ場のない状態で美容師さんに次々なんか世間話的に
質問されちゃうのとか、全然ちょっとも見たくない雑誌を渡されるのとか
本当につらくて、やっとのことで美容師さんに「黙っていて欲しい」と頼んだのに
それがそのお兄ちゃん美容師の「お客さんとは会話し仲良くせねばならぬ」
というファイティングスピリッツに火をつけてしまったようで、
もう途中で泣いて帰ろうかと思ったら、そこの店長がやっと助けに来て
静かに続きをやってくれたこととかもあった。
そこの店だけが特に変に、客と強制会話の使命感に燃える美容師戦士を
養成していたわけではないと思う。


大体どんなど根性で知らない人に「趣味はなんですか」とか聞くのか分からん。
仮に「読書」とか答えたとするよ。
そうしたら必ず「へえ、どんな本読むんですか?」とか聞かれちゃうんだよ。
他人が読んでいる本に興味が持てる確率の低さを恐れなさすぎだよ。
もしもだよ、バタイユゲッツ板谷大江健三郎とか答えちゃったらさ
「へえ、すごいですね」とかきっと言われちゃうんだよ。どうするよ。
「どんな本なんですか」とかきかれちゃったら、こっちから何か別の話題を
無理矢理ふらないといけないしさ。
「私もわりと本は好きなんですよ」って興味が無い作家名言われても困るし。

あと「プロ野球チームはどこのファン?」ていう質問はさすがに今の時代は
消えたようで安心だ。
しかし「スポーツは何が好きですか?」はまだ生きている。嫌だなこれ。
スポーツに興味はない人もいるということを私が説明しなくてはいけない状況。
もう30代になってからも、おばちゃん美容師に
「じゃあ一体何にご興味がおありなんですか」とムッとした調子で聞かれて
ちょうどその頃に寄生虫について、その種類とか生態とか
宿主との共存する生き方のことを考えていたので、そのまま「寄生虫」と答えて
嫌な顔のまま「飼っているんですか?」と聞かれて
それは昆虫飼うのと違って人体等に寄生させることでいろいろ問題が、とか
丁寧に応答する我慢強い客を私はしていたのに、ますます嫌な雰囲気で
でもその店にはもう行かないし、今は美容師さんの仕事の話とかをきいて、
それは大変なお仕事ですねと感心したりする客にうまくなれているから大丈夫。
髪型については、あまりよくわからないので良いようにしてくださいとか
夏だからちょっと短めとかそのくらいで、主張の乏しい大人しい客。