こりゃまいったね

美術系の女子生徒が腹痛で保健室に休みに来た。
眠るわけでもなかったので、
「何故こんな良いものが高校の図書室の棚に普通に地味に置いてあるのか」と
私が驚いて借りてきた画集を見せてあげた。

語りえぬもののための変容 (1981年)

語りえぬもののための変容 (1981年)

和紙の台紙に写真のような版画のような作品が張られた、限定制作の
とてもかっこいい本だ。ただし目立たない。
腹痛の少女はそれをとてもよろこんで眺め
この加納光於さんて誰だっけときくので、澁澤龍彦の本の表紙とかに描いた人、
と答えたところ「ああ私、今朝も電車で澁澤さんの本を読んでいたんです」と
うれしそうに言う。

そしてそして
「私、両親と澁澤邸に行って、あの書斎に入らせてもらったことがあるんですよ」
と語った。

「この書斎に入れる子どもなんて普通いないのよって母に言われたけれど、
今になったらあれはすごいことだったんだなって思う」ですって。
うー。うー。うー。うごごご。
これは思春期にありがちなフィクションとかでは絶対にない。
なぜならこの少女は確かに某氏の御息女。真実味100%

そして彼女の自宅は両親がそれを意識し作ったということで
澁澤さんの書斎とよく似た部屋があり、ベルメールの版画もあるとか
書籍のほかに鉱物や昆虫などの標本も置かれていて理科室っぽいとか、
お腹に湯たんぽ当てながら、めくるめくお話を聞かせてくれた。
こりゃまいりました。御息女おそるべし。