「この自由な世界で」

渋谷で観てきた。とてもしっかり真面目につくられた社会派映画。
説教くさくなんてないし、非常にわかりやすい。そしておもしろい。
主人公はロンドンでの若くて美人で勝気なシングルマザー。転職多し。
上司にお尻触られて怒ったら失職した。借金もある。
女友達が自分の職場に誘ってくれたけど、そんな最低賃金の不安定雇用で
将来の見えない暮らしはもういやだと、
一念発起して、自分達で職業紹介所を作った。外国人労働者を集めて
日雇いで工場などに送り出す仕事。
主人公はすごく頑張る。子供のそばにもっといろと親に説教されたって
その安定した暮らしのためには今は頑張ってこの会社を軌道に乗せなくてはいけない。
自分は収入が得られて、工場主は労働者を便利に使えて、
労働者達だって職を得られて、頑張ればうまくいくと思ったのに。
派遣先の工場は不渡りを出す。もし自分の会社でその賃金を肩代わりしたら
会社の経費は不足してしまう。
集合場所に職を求めて来たのが老人だったら怒鳴りつけて帰らせる。
法的にぎりぎりなこととか、倫理的にあんまりなこととかもする。
普通の安定した生活の手段が欲しくて頑張ったのに。
搾取する側の残酷な理屈で動くようになる。恨みも買う。
父親は心配するが、安定して何十年も雇用されるのがあたりまえだった時代では
今はない。
主人公は魅力的で才気もあって、ちっとも悪い人なんかじゃない。
資本主義社会で自分で道を切り開いて生きようする立派な美人さんだ。
自由主義経済の世の中で生き残るきつさを静かに考える映画。
この映画はテレビとかでも流してたくさんの人が見るといいと思った。
「この自由な世界」の自由さと不自由さをじっくり考えるために。