伝説の叔父、死す

私の母方の叔父が年末に亡くなり、三が日があけてから葬儀。
いろいろ伝説があった叔父。
勉強がよくできて本郷の最高学府を卒業。賭け事が好きで
30年ほど勤めた商社の退職金もすぐに全額、失ってしまったとか。
飲酒が多い人で、私が時々会うときは8割くらいの確率で酔っ払っていた。
なんかいつもセカセカと独自のペースで動いていた。
祖母が亡くなってから1人暮らしをしていた。
「年末の大掃除は全て済ませた」と私の母親に自慢しながら
「念のために」と、うちの息子へのお年玉を預けて行って
それからすぐの急死だったそうだ。
家の中も庭もきれいに掃除され、普通に好物を食べ酒も飲み。
玄関の外にまとめたゴミ袋を集積所にまだ出しにこないからと
親切な隣人がすぐに叔父の異変に気づいてくれた。
死の1ヶ月前にも海外旅行を楽しみ、ちょうど借金も貯金も残さず、
最期までマイペースの生活。
「人間、そんな風にきれいにぽっくり死ぬなんてできるもんじゃない」と
言われてしまいそうだが。
叔父はやっぱりすごい人だったのかもしれない。


火葬が終わって、叔父と祖母が暮らしていた家に親戚たちと行った。
「遺品で欲しいものは持っていって」と言われた。
息子が箪笥や食器棚から欲しいものを選んだ。
何故それが欲しいのよと皆に聞かれたが「だって、これすごく良いし」と。






息子が最も強く反応したのが、この卸し金。
なんであなたがおろし金を欲しがるのよ、の問いに
「だってこれ、すごくかっこいいよ」と。
息子は昔から路上でよくわからない金属部品などを気に入って拾ってくる
子どもだった。
家で今後、大根おろしを息子がときどき作るということでこれをいただく。



これは、私が子どもだった頃、この家に泊まると
朝食のときに祖母が半熟タマゴをゆでてくれて、
その端をこのニワトリのエッグ鋏で切り落として、
陶器のエッグスタンドにたててスプーンですくって食べたんだった。
祖母はいつもトーストと紅茶と半熟卵が朝食にあった。
私の母親が子どもの頃からこのエッグ鋏はあったという。





そして叔父が使っていたラジオ。「かっこいい」と息子。
電池を入れたらちゃんと聞こえた。
昔の音が聞こえてきそうだ。