伝説のオカマ

常識を越えて―オカマの道、七〇年

常識を越えて―オカマの道、七〇年

昭和の頃は供託金が今ほど高くなかったのか、選挙には不思議な人たちが
大勢立候補していた印象がある。各人かなり不可解な主張などして。
私が子どもだった頃、選挙公報でひときわ目立つ謎めいた詩のようなものを見て、
「この東郷健という人は一体何なのか」と両親に問うたところ
「きっと病気なのだろう。あまり見ない方が良い」とかいうような指示を受けた。
やがて選挙権を得る年齢に近づいた頃、年上の友人が東郷健のファンだと言った。
選挙公報をまた見ると、雑民党の東郷健。なるほど何だかオモシロイ。


この本では東郷健の生い立ちから、結婚、ゲイ遍歴、選挙での主張、ワイセツ裁判
など一通り書かれており、伝記又は東郷健入門ガイドのよう。
彼の論旨展開は私には分りにくいものが多い。
「男が男を好きなのに性転換手術なんて」と否定的なのに、女装厚化粧とか。
「愛は自由!」と叫ぶが、パトロンの浮気にはやたら厳しいとか。
しかし、時々キラキラするほど美しい、的を得たことを言う。
身内にいたらきっと対応に困るかも、と思うが
「オカマのどこが悪い! オカマのどこが恥ずかしい!」と堂々と叫ぶ爺さん。
ちょっとカッコイイと思う。