石田徹也遺作集

石田徹也遺作集

石田徹也遺作集

先日実家で弟から貰ってきた。
テレビの日曜日術館で見たことがある絵だ。
弟はその放送より前に本屋で偶然この画集を見て購入したという。
一度ちらりと見てしまったらもう忘れられない絵だ。
作者と似た顔の男性がほとんどの作品に様々に登場。
教室で顕微鏡に変身した姿で着席していたり、便器に入っていたり、
何人もいたり、校舎と一体化していたり、
どれもこれも悲しげなその顔で、不思議な状態で静かにそこにいる。
とてつもなく不安で、怖い。可笑しい。悲しい。
張り詰めている。低い温度。でも少し暖かい。
こんなにつらいのに穏やかにそこにずっといる。


作者は31歳で亡くなった。
うちの娘の美術系高校の先生から、とても繊細な非常に鋭い絵を描く生徒を、
これ以上描き続けることは危険が大きすぎるから絵から一度離れたほうが良いと
針路変更を進めた話を以前に聞いたことがある。この作者の絵を見た人たちも
そんな不安は感じていたんじゃないかと思う。
感性と才能のある自分が、自分をがっちり捕まえていて、
もう何を見ていてもどこにいても、自分は自分から逃げられない。苦しいのに心地よい。