孫娘可愛や

お姑様がお泊りに来ていた。
お姑様はウチの近所の回転寿司で、孫娘にご馳走してあげようと
それを楽しみにしていた。
しかし肝心のその孫娘(高2)は、美術系高校生の天敵「カケナイ様」の襲来を
受け続けている状態のまま、なんとか文化祭準備に加わっている。帰宅が遅い。
「せっかくご馳走してあげようと思ったのに」と
お姑様は嘆く嘆く嘆く。2分置きに延々と嘆く。
もうすでに、私と夫と息子とお姑様だけでの回転寿司は、
彼女にとって孫娘の不在を強調する悲嘆のイベントと化してしまった。
お姑様、うちにはあなたの孫はもう1人いるんです、クラスの清涼剤と
言われる味わいのある良い子ですよほれほれ、という声などはもう届かない。
そしてエンドレスに繰り返される会話。
姑「孫娘はまだここに来ないの?」
私「まだ学校にいるんです。」
姑「ええっ?こんな時間なのに」
私「明日からの文化祭の準備で今夜はとても帰りが遅いんです」
姑「そんなのおかしいわ。学校に迎えに行きなさい。」
私「先生も友達も一緒に明日の準備をしているんです」
姑「でももう帰って来なきゃおかしいわ」
私「携帯電話で連絡取れてますから。駅に着いたらまた電話来ます」
姑「孫娘だけお寿司が食べられないなんて可哀想」
私「学校で軽食とっていますし、寿司は持ち帰り分も頼んでいますから」
姑「私がせっかく・・・・」そして会話が冒頭に戻り、数10回リピート。
認知が多少悪くなったお姑様がこよなく孫娘を愛する気持ちはよく分った。
息子はそこで自分の存在を主張せず、そんな会話を聞き流しながら
満足そうに静かにもりもりと食べ続けていた。良い孫じゃないか。