art・芸術・昆虫

最近読んだ本の中でおもしろかったもの3冊。

アーティスト症候群―アートと職人、クリエイターと芸能人

アーティスト症候群―アートと職人、クリエイターと芸能人

そのあたりを歩いている若者に、「今、美術界で活躍している
日本人アーティストを10人挙げてください」とたずねたら、
何人答えられるだろうか。十人スラスラ挙げられる人は
百人に1人、いやもしかしたら千人に一人くらいのものかもしれない。

うううむ。何を今さらなんだけれども、厳しい世界だ。
私が好きな「開運!お宝鑑定団」についての話もある。
好きとかそういうことじゃなくて、すべて鑑定の結果で金額で評価できる
という、分かりやすいルール。





芸術起業論

芸術起業論

この本は表紙で損をしている。こんな表紙で客逃がして良いのか村上隆は。
出版されてすぐの頃は特に、少女向けの洋服屋が使っていたネズミのキャラクター
のことで村上隆の悪代官的イメージが私の中にあったし。だから最近まで避けてた。
でも、読んでみたらかなり面白い。
NYのオークションで彼のお下品なフィギュアが16億円になったことに
納得できるわけがないじゃんそんなの、と思っていても読むと面白い。
何億円の買い物をポンとできる富裕層を相手にする商売。

壊れた世界で命を燃やさなければいけないお金持ちの「物足りなさ」が
芸術に向かいますから、金銭ですべて解決してきたはずの富裕者の
見えない欲望を確認するかのように、精神異常者の作品や性的虐待を含む
作品が求められる時もあります。

お客さんが期待するポイントは
「新しいゲームの提案があるか」
「欧米美術史の新解釈があるか」
「確信犯的ルール破りはあるか」
といずれも現行のルールに根ざしています。
だから「はずした!」と思われた芸術家は失墜してゆきます。

好きな事やってたら世間に認められちゃっていつの間にか売れっ子に
なんておとぎ話なんかではなく、世界基準の戦略での戦いをしているという話。




日本一の昆虫屋 志賀昆虫普及社と歩んだ百一歳 (文春文庫PLUS)

日本一の昆虫屋 志賀昆虫普及社と歩んだ百一歳 (文春文庫PLUS)

本当にこの人は唯一無二のまぎれもない日本一の昆虫屋だ。
大正時代には昆虫の蒐集は華族階級などの貴族の趣味だった。
一般の人は「虫けら嫌い」で
図鑑らしい図鑑もなかった時代。
店を構え、注文を受けて昆虫採集をして標本を作り
そのためのオリジナルの器具も次々に開発して売った。
好きだから頑張れたって言いつつ戦略立ててるのが、
読んでてわくわくする。

先日、うちの娘が新潟県でこの人が寄付したたくさんの蝶の標本を見て
昆虫は全然好きでないのに、感動して、標本が並んでいる場面の写真の
ポストカードを買って来た。前知識なしでたまたまなのに良いとこ行ったなあ。