瀬戸内国際芸術祭〜豊島

ブログの更新のことは忘れていたわけじゃないんですが
また随分と日にちがあいたけど続きね。


瀬戸内国際芸術祭の旅は、大感激で維新派犬島公演を鑑賞して深夜に
岡山に戻って泊った翌朝は豊島に渡ったのでした。


波がない海。島々の間を船で行く。
豊島(テシマ)といえば、過去に産業廃棄物問題でえらいことになっていた記憶があるが、今は美しい静かな島。



島の小さな港から歩いてボルタンスキーの展示を見る。
豊島の民家と似た黒い壁の小さな建物。


その建物は静かな浜辺にある。
とても暑い日だったので、娘はまず海に足をひたす。

作品は「心臓の音アーカイブ」という。
小さな建物の中の真っ暗な部屋で、心臓の音にあわせて
電球が点滅する。
健康的なドンドンとしたリズムに合わせてパッパッと元気に明かりが点滅したり、別の不規則な鼓動でやや弱く点滅したり、
心音の主が数十秒おきに変わるのがわかる。次々に変わる人々の鼓動を暗い部屋でしばし静かに聴く。
別の部屋では明るい海岸風景を窓越しに見ながら、この作品のもとになった
大勢の人たちの心臓の音のデータを各自、パソコンで選んで聴く。
日本語のコメント付きのものもある。
力強くてきれいな拍動音には「僕は6年生です。水泳が好きです」
静かでやや不規則な拍動音には「孫の成長が楽しみです、長生きしたい」
などのコメント。
人のいない夏の光のまぶしい浜辺を眺めながら、知らん人たちの生きている音を聴くのがこんなに良いものだったとは。


そして島内をバスで移動して「島キッチン」へ。
限りあるバスの運行時間に要注意。
島キッチンは建物も全体が瀬戸内国際芸術祭作品のレストラン。

屋根が低く広がる作りで、猛暑でも屋外席で涼しく風が通る。



私と娘は縁側の席についた。
魚を使った定食が売り切れとのことで、キーマカレーセットを頼んだ。
私の今までの人生で食べたキーマカレーセット史上、最高の美味しさ。
このエビの小皿前菜とか、もうすべてがびっくりするくらい美味しい。
ドレッシングに豊島産の柑橘類を使っているとのこと。
娘は地元のオリーブ使用のサイダーを頼んだ。これも非常に場面に合致。


庭には青い実をつけたイチジクの木。
真夏の日差しの中の涼しい風と
音楽と、庭につぎつぎ飛んでくる蝶々と、何より美味しい料理と。
冷たいビールも飲んで、もうここは世界で一番快適な場所のような気がした。



島キッチンを出てからは、この島で印象的だった作品は
「藤島八十朗の家」

何の役にもたっていない架空のおじさんが
誰かの役に立ちたいと願って暮らす家。
小汚くてボロボロでごちゃごちゃしていて
孤独と人類愛が心にいっぱいに散らかっている家。



私の理想の本棚に近い。



2階にもいろいろある。今時推奨されている「物を持たないシンプルライフ」とは対極。
誰か困っている人が来たら、テントに泊らせてあげよう。
食器もたくさん貸せるし、服だって貸せる。
集まって楽器を弾くことだってできる。
いつか来るかもしれない誰かのためのもの。


架空のおじさんと、実際に島にこの作品を作った人と
ここに出入りする人々は、どうつながるんだろう。


庭もお客さんが休めるようになっている。
まだこれからも作っている途中。


お風呂はどうやって入って良いのかわからないです。