息子が作った映画のこと

高校の文化祭のために息子たちはクラスをグループ分けして
各班1編ずつの短編映画を作った。
お客の評判は全体的にとても良く、しかし息子の作った映画だけは
会場でのアンケート結果ではダントツで不人気だった。
主な理由は「なんだかわからん」「退屈」など。


他のグループの映画は、YOU TUBEなどで人気の動画に
ヒントを得ているものが多かった。
息子が発案して他のグループで作った
わらしべ長者を校内で実際に他学年や先生も含めてやってみる。
交換を繰り返す様子をドキュメンタリー映画に編集する。ゴールは校長室」は
楽しくて編集も素晴らしくて大好評。


しかし、息子が自分で完全オリジナル脚本を書き
自分で監督して撮影して編集した方の20分作品が人気無し。
非常に息子らしい「完全息子ワールド」だが。


その中でひとりだけ、同級生のお父さんがアンケートに
「斬新でポエティカルで感動した」という感じのことを丁寧に書いてくれた。
後日の保護者会の席でも、そのお父さんはまたその話をしてくれて
「自分が高校生のときに、やはり映画を作ったことがある。
 当時は8ミリフィルムで作る以外の選択肢がなくて
 自分はそのためにものすごく頑張ってアルバイトをして
 10万円もの大金を作り、それを全額注ぎ込んだ。
 作ったのはゴジラキングコングが戦う映画だった。
 今考えると、何故そこまでして頑張って作ったものが
 ゴジラキングコングだったのかが自分でもわからないが。
 そして今回、 延々と廊下の床を映し続けて詩的に語ったりしていた
 息子くんの映画を観て、その思い切りに胸が熱くなった。」


息子の作った映画は、体の100パーセントが常時地中に埋まっているという先生と、
その高校の生徒の創作ドキュメンタリーということで。
教室や廊下の床から先生は生徒たちに話しかけ、
生徒は廊下に土下座のような格好で床に顔を近づけて先生に文句を言ったり、
教室で自分の足元から先生に励まされたりしている。
先生は生徒たちの手によって地面から一度は掘り出されるが、
地上の光の美しさに感動して、それを心に思いながら
また臭くて暗い地下に戻って先生を続ける。


うちの息子ときたら、もう、幼児のころからずっと謎の少年で
独自の「息子ワールド」を持っていると言われ、それが良いといわれることも
あったんだけれども、こんなにちゃんとそれを真面目に評価してくれた
他人のおとながいてくれて幸せなことだ。
ちなみに私はこの映画はかなり好きだが、それをちゃんと伝える言葉が足りない。